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遺産相続の利便性

システミックリスクは、支払い不能が他の金融機関や企業に波及することであるから、リアルタイム決済機構の導入が有効となる。 BIS規制は、国際間の金融機関の取引において、一つの金融機関の決済ができないこと(デフォルト)が他の金融機関へのデフォルトとして波及していくシステミックリスクを防ぐことを目的とする、信用秩序維持のための規制である。
その規制は定性的規制と定量的規制とからなり、前者は、リスク管理の組織体制に関わるものであり、定性的基準としては、独立したリスク管理組織と取締役クラスの責任者の設置等を国際金融の中でのシステミックリスクを避けるために作られたBIS規制は、日本の金融慣行やシステム、経営に大きな影響を及ぼし、結果として金融の機能化を促進した。 本節では、BIS自己資本比率規制の内容と日本の金融システムへの影響を見る。
として定義する。 ここで含み益とは、株式などの有価証券含み益である。
株価水準が下がると、この含み益が減少し、自己資本量が下がる。 後者は、国際業務を営む金融機関に対して、自己資本比率が八%以上となることを求めている。
実際にはこれに保有しているデリバティブのリスク額を加える。 このように定義された信用リスク量に対して、自己資本比率を五つに分け、信用リスクウェイトをそれぞれ○、○・二、○・二、○・五、一として与える。
そして銀行の信用リスク量を定義し、これが八%以上でないと国際業務を営む金融機関として扱われない。 これが九○年代にマスコミをにぎわせた自己資本比率規制である。
ここでは、信用リスクウェィトが貸出先の信用リスクに関係なく共通に与えられているので、各金融機関に共通な自己資本比率規制となっている。 第二次BIS自己資本比率規制の合意では、銀行の持つ資産がさらされている市場リスクも考慮しようとする。
この合意は、監督当局の立場から銀行の市場リスクと信用リスクを含めた支払い能力を定量的に監督することを意味する。 金利リスクと為替リスクに対しては銀行のすべての資産に対してリスク額を計算する。
また、株式、商品の価格変動リスクについては、銀行のトレーディング勘定にあるものについてのみリスク額を計測する。 金利、為替レート、株価、商品価格の各々が一単位変化したときの資産の変化額を計算するのである。
たとえば金利の場合、一単位を○・一%(一日あたり)とすると、金利が今日の水準から○・一%上昇したときの保有資産の変化額を算出する。 そしてこれらの変数の相関を考慮し、ポートフォリオ全体の(一日あたりの)価値の変化の確率分布を考えて、一%の確率で起こる損失額の最大値をVaR(バリューァットリスク)額と定義する。

この値を市場リスクにさらされている額とみなしとする。 九八年四月以降BISは、リスク管理のあり方に関して、内部管理体制のフレームワーク( の原則)、信用リスクに関する指針などいろいろ提言している。
しかしそれらは国際的な合意に至っていない。 他方、金融監督庁は、監視の一つとして信用リスク額の計測におけるリスクウェイトを変更した(九九年七月)。
そして内部格付けモデルに基づいて格付けを決め、リスク量を計測する方式を求めている。 その結果格付けの高い企業への貸出のほうがリスク量が小さくなるため、信用リスクの小さい企業を選択して貸す傾向が強くなった。
これをしばしば「質への逃避」などといわれるが、銀行経営からいえば当たり前のことであろう。 これも「貸し渋り」問題と関係するが、原因ではなく、リスクビジネスとしての銀行経営の基本と考えるべきものである。
他方、BISは、九九年六月に、信用リスク量の計測方式としてモデルによる信用リスク額の計測の方向性の議論をまとめたため、各金融機関は、モデル開発の競争をしている。 モデルによる評価の重要性は、貸出金額や保有している債権の信用リスク構造を評価することが可能になる点にある。
たとえば、同じ貸出金額であっても、特定の産業や格付けが低い企業に貸出金額が多い場合、景気の状況で一気に倒産が起こる可能性も高まるので、モデル評価の場合、その点を考慮に入れた評価をすることが重要になる。 さらに現在BISでは、組織に関わるリスクとして、オペレーションリスクを計量化し、それも考慮した自己資本比率の規制を検討している。
結果的に見るとBIS規制の日本の金融への影響は極めて大きかった。 バブル景気のさなかの八八年に第一次BIS規制に合意したとき、当局がその影響をどこまで理解していたのか、興味あるところである。

九三年の信用リスクに関する第一次BIS規制開始のとき、すでに株価は大きく下落していた。 そのため自己資本比率規制をクリアできるか、不安が出始めていた。
しかし長期的な視点からみるとBIS規制は、日本の銀行業の経営にリスク概念を植え付け、客観的な計量的指標でみずからのリスクポジションを把握する経営を促した。 そしてその経営法をゲームのルールとして共通化したという点では評価できよう。
そしてその影響は、業態をベースとした日本の金融機関のリエンジニアリング(再構築)だけでなく、機能化を促すこととなっている。 第一の経営のリスクの計量化は、BIS規制の自己資本比率管理のVaR計量化に大きく関係する。
実際、BIS規制では、経営者がみずからその概念を理解し、それを管理しなければならないことを求めている。 貸出額をリスクエクスポージャー(リスクにさらされている資産額)として認識すること、そしてそれを資本金と比較してみずからのリスクと認識するという経営概念はそれまでになく、預金量をできるだけ集めて目いっぱい貸し出すバランスシート拡大型の日本的銀行経営にブレーキをかけた。
貸出量が自己資本にとってリスク量であるという見方は、「目から鱗が落ちる」ようなメンタリティの改革であった。 バブルの崩壊後、持ち合い株式の含み益が減っていく中で預金が集まっても、自己資本が十分にないと貸出ができないことになる。
その中で住専の不良債権処理問題が、銀行経営を圧迫していった。 加えて、市場リスク量をVaRで計測しなければならないという九八年の規制は、経営者たちにとって頭の痛い問題であった。
そもそもVaR自体を必ずしも理解していない中で、モデル開発、システム開発の投資を要求され、その結果自己資本比率が八%を超えるかどうか不安であった。 それをクリアできないと国際社会で金融ビジネスができなくなるのであった。
長引く不況の中で株価が低迷し、貸出債権の不良化は日増しに増え、不良債権についての情報が十分開示されない中で、当局は銀行がBIS規制八%をクリアするために資産の評価に関して取得原価(原価法)でもよいとした。 これはまさに企業価値を経済価値として評価する立場から大きく逸脱して、会計的な処理で取り繕うに過ぎない処理を当局が自ら進めたことになる。
そこまで状況は厳しかったのであろう。 不良債権問題と、客観性を要求されるBIS自己資本比率規制は、互いに関係しあって金融に革新的な変化をもたらすことになる。

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